日本人のアイデンティティを考えるとき、稲作は欠くことのできない文化です。
古来、日本人は米によって命をつないできました。カエルが鳴き、トンボが遊び、アメンボが株間をすいすい抜けてゆく水田は生命のゆりかご。谷を越えた風がわたると、青々とした水田は波を打って白く輝き、その向こうには葭葺(よしぶ)きの母屋や素朴な農小屋がたたずんでいる。そんな風景に誰もが「ふるさと」を思い起こすのは、かつての農村の姿が、私たちの記憶の底に眠っているからに他なりません。
水田の恵みは米ばかりでなく、藁もまた日本の暮らしには欠かせない資源です。家屋では屋根材や粗壁、畳床に、生活用品では俵や菰(こも)、縄、草履(ぞうり)にと、用途は数知れず。「藁を焼いたら笑われる」といわれる所以です。化学製品が普及した今日ですが、しがらきの里では、藁一本も無駄にしないよう心がけています。そうした暮らしは、手間はかかりますが、日本人の精神性と直につながっています。
米作り体験などを通して、多くの方に、水田とふれあう機会を持っていただきたいと考えています。