しがらきの里の中心には、二棟の古民家が建っています。ともに江戸後期、文化・文政のころに琵琶湖北東、浅井の地に建てられた石居家と岡家をそれぞれ移築したものです。後にわかったことですが、かつて岡家から石居家への嫁入りがあったそうです。いま、両家が並び建つのも縁あってのことなのでしょう。
葭葺(よしぶ)きの民家は、自然とつながっています。そして家を形づくる草も木も土も、それぞれに息づいているのです。昼間は家のまわりの田や畑で汗を流し、日暮れた後は大家族がひとつ屋根の下に集って、一日の出来事を話し合う。談笑しながらの夜なべ仕事もあったでしょう。
家はそうした家族を温かく包み、家族は家によって絆を深めてゆく。昔の人にとって、家を離れて暮らすなど思いもよらないことでした。どっしりとした葭の大屋根、おくどさんに燻(いぶ)されて黒光りする太い梁(はり)や大黒柱……。
それは自然の恵みを、家族の温もりを知る家です。